ピアノ指導者のための倫理・コンプライアンスガイドライン公開

ピアノ指導者のための
倫理・コンプライアンスガイドライン公開

ピティナでは、持続可能な音楽教育業界の発展を目指し、指導者の皆様がより高い倫理観に基づき、安心して活動できるよう、「ピアノ指導者のための倫理・コンプライアンスガイドライン」を公開いたしました。


ガイドライン公開の背景と目的

音楽教育業界が健全に成長していくためには、指導者一人ひとりの高い倫理観と法令遵守が不可欠です。また、継続的に倫理・法令遵守に関する学びの場を提供することが、ピティナの重要な役割であると考えます。

今回発表した【ガイドライン】は、健全な業界づくりの第一歩です。会員の皆様と共に改定を重ねながら、より良い【ガイドライン】を育てていきたいと考えています。

ピティナは社会の変化にあわせ、引き続きより多くの皆様に音楽体験の機会を提供していきます。

ピアノ指導者のための倫理・コンプライアンスガイドライン

ガイドラインでは以下の6つの項目に言及しています。

生徒保護と安全確保
ピアノ指導者は、生徒の安全と保護を最優先に考えなければなりません。
プロフェッショナルとしての行動規範と倫理
プロフェッショナルとして、公平性・公正性を保ち、生徒一人ひとりの権利と尊厳を尊重して接する必要があります。
契約と料金の明確化
可能な限り、書面またはそれに準ずる形式(電子ファイルなど)で契約(同意)文書を作成することが望ましいです。
個人情報保護とプライバシーの尊重
知り得た個人情報(氏名、連絡先、進捗状況、家庭環境など)を、正当な理由なく第三者に開示したり、指導以外の目的に利用したりしてはなりません。
著作権および知的財産権の遵守
著作権法を遵守し、楽譜、教材、録音、録画などの利用には十分注意を払う必要があります。
緊急時の対応と報告
生徒や保護者から、ハラスメントを含む不適切な行為に関する相談を受けたり、そうした行為を目撃したりした場合は、真摯に耳を傾け、プライバシーに配慮しながら対応する必要があります。
確認テストと受験済マーク

正会員・指導会員・演奏会員・作曲会員・研究会員の皆様はピティナ・マイページから「ピアノ指導者のための倫理・コンプライアンスガイドライン確認テスト」の受験をしていただくことが可能です。(受験は任意です)
テストで合格点をおさめた場合、教室紹介ページにバッジがつきます。

倫理テスト受講済
会員限定セミナー開催

スポーツ界では、2013年に 「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」が採択されて以降、各スポーツ団体において指導者やプレーヤーに向けた「スポーツ・ハラスメント」を起こさない、被害にあわないために必要な研修会等を開催するなど、さまざまな啓発活動が進んできました。

今回、土屋 裕睦先生(日本スポーツ心理学会理事、大阪体育大学教授)をお迎えし、ピティナ会員限定オンラインセミナーを実施します。

タイトル スポーツの分野から学ぶ「誰もが安全・安心」な指導
日程 10月14日(火)10:30-12:00 オンライン実施
定員 60名限定
講師 土屋 裕睦先生
注意事項
  • ディスカッションを多く含む内容になります。カメラ・マイクをONにできる環境での参加を必須とさせていただきます。
  • 参加者の皆様のプライバシー保護のためにも、なるべく個室などでの参加をお願いします。
参加費 3,000円
土屋 裕睦先生プロフィール
日本スポーツ心理学会理事、大阪体育大学教授。公認心理師・スポーツメンタルトレーニング上級指導士として、アスリートやスポーツチームに対する心理的援助活動を行う傍ら、スポーツカウンセリングに関する実践的、実証的研究をおこなう。
日本代表チームやプロスポーツチーム、国体強化、中央競技団体(NF)が主催するプロジェクト等において、スポーツカウンセリング、メンタルトレーニング指導、チームビルディングを担当。ほか、コーチのコーチ(コーチデベロッパー)として公認コーチ養成講習会講師やエリートコーチ育成のためのメンタリングを担当。
困ったときには……:専門家によるオンライン無料相談窓口

ピティナ会員限定特典として、教室経営、法律に関することを無料(1回30分)で相談できる窓口(オンライン)を開設しています。是非ご活用ください。

詳細へ
ピアノ指導者のための倫理・コンプライアンスガイドライン

本ガイドラインは、ピアノ指導者が専門家として遵守すべき基準と倫理を示し、生徒およびその保護者を含む関係者との健全な関係を築き、安全で信頼される指導環境を提供することを目的とします。

1. 生徒保護と安全確保
  • ピアノ指導者は、生徒の安全と保護を最優先に考えなければなりません。
  • 身体的・精神的・言葉によるあらゆる暴力や、ハラスメント行為(パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメントなど)は固く禁じられています。
  • パワーハラスメントには、指導上の優位な立場を利用した精神的・身体的苦痛を与える行為や、コミュニティからの意図的な排除、達成不可能な目標設定と過度な叱責、プライベートへの過度な介入などが含まれます。
  • セクシュアルハラスメントには、相手の意に反する性的な言動や身体接触が含まれ、不快感を与える行為です。容姿や服装をからかう、執拗な誘い、性的な内容の通信なども該当し得ます。安全確保に必要な場合を除き、身体接触を伴わない指導方法を優先的に検討することが望ましいです。身体接触が必要な場合でも、事前に説明し、理解を得るように努めるべきです。
  • ピアノ指導は一対一で、個室や家庭といったプライベートな空間で行われることが多いため、レッスン環境(例:ドアを開けておく、保護者の同席・待機場所確保)に配慮することが望ましいです。
  • 生徒の人格や尊厳を尊重し、差別(年齢、性別、性的指向、性自認、障がいの有無、国籍、人種、宗教などに基づくもの)を行ってはなりません。
  • 児童虐待が疑われる場合、通告義務が生じます。
2. プロフェッショナルとしての行動規範と倫理
  • ピアノ指導者は、自らを律し、高潔な人格を目指し、常に向上心を持ち続けなければなりません。
  • プロフェッショナルとして、公平性・公正性を保ち、生徒一人ひとりの権利と尊厳を尊重して接する必要があります。
  • 生徒との信頼関係を築きつつも、適切な距離感を保ち、過度な主従関係や親密な関係にならないよう注意が必要です。
  • 指導上の地位を利用して、自己または第三者の利益を図る行為、あるいは第三者を害する行為は禁じられています。
  • いかなる理由があっても、暴力やハラスメントを自ら行わないだけでなく、他者による行為も許さず、黙認・隠蔽しない姿勢を堅持する必要があります。
  • 自己研鑽を継続し、常に新しい知識や指導法を学ぶ姿勢が求められます。
  • 指導者仲間や関係者と連携し、お互いに気づきを伝え合い、サポートする文化を築くことが重要です。
3. 契約と料金の明確化
  • 生徒および保護者との間で、指導に関する契約条件を明確に定めることが推奨されます。
  • 可能な限り、書面またはそれに準ずる形式(電子ファイルなど)で契約(同意)文書を作成し、以下の事項を含めることが望ましいです。
    • 指導内容、頻度、時間、場所
    • 料金、支払い方法、支払い期日
    • 欠席・遅刻・振替に関するルール
    • 退会・休会に関する手続き
    • 指導者、生徒、保護者それぞれの役割と責任
    • ハラスメント防止に関する事項(例:相談窓口の案内、禁止行為の確認)
  • 契約内容について不明確な点がないよう、事前に十分に説明し、質問を受ける機会を設けるべきです。
  • 公的な資金や助成金等を受け取る機会がある場合、その経理処理は適切に行われなければなりません。資金を個人のものと見なしたり、ルールに違反したりする考え方は、不正行為につながるリスクを高めます。
4. 個人情報保護とプライバシーの尊重
  • ・生徒および保護者の個人情報は適切に管理し、プライバシーを尊重しなければなりません。
  • 知り得た個人情報(氏名、連絡先、進捗状況、家庭環境など)を、正当な理由なく第三者に開示したり、指導以外の目的に利用したりしてはなりません。
  • レッスン中やコミュニケーションツール(メッセージアプリなど)でのやり取りにおいて、個人的な情報やプライベートな事柄について過度に詮索したり、不必要な質問をしたりしないよう注意が必要です。
  • SNS等での情報発信を行う際は、生徒や保護者のプライバシーに十分配慮し、個人が特定されるような情報(写真、動画、氏名、学校名など)を無断で公開してはなりません。
5. 著作権および知的財産権の遵守
  • 著作権法を遵守し、楽譜、教材、録音、録画などの利用には十分注意を払う必要があります。
  • 楽譜の無断複製や配布は、著作権侵害にあたります。指導に必要な場合でも、法的に認められた範囲内で行うか、適切な手続き(購入、許諾など)を経る必要があります。
  • レッスン風景や演奏を録音・録画する場合、生徒や保護者を含む関係者全員の同意を得る必要があります。録音・録画データの使用目的(例:指導のために共有、SNSで公開など)を明確に伝え、許諾の範囲を超えて利用してはなりません。
  • ご自身の指導法や教材が知的財産権の対象となる可能性もありますが、他者の既存の著作物やアイデアを利用する際には、適切な形で参照・引用するなど、知的財産権を尊重する必要があります。
6. 緊急時の対応と報告
  • レッスン中に生徒が体調を崩したり、怪我をしたりするなど、緊急事態が発生した場合に備え、保護者への連絡先を常に把握しておき、必要に応じて救急対応や保護者への速やかな連絡を行うための手順を確認しておくことが望ましいです。
  • 生徒や保護者から、ハラスメントを含む不適切な行為に関する相談を受けたり、そうした行為を目撃したりした場合は、真摯に耳を傾け、プライバシーに配慮しながら対応する必要があります。
  • 相談内容が自身では対応できない場合や、組織的な対応が必要と判断される場合は、外部の専門機関(弁護士、警察、児童相談所、相談窓口など)に速やかに相談・報告する必要があります。
  • 相談や報告を行った者に対する不利益な取り扱いは決して許されません。
  • 問題発生時には、被害者の支援を最優先に考え、必要に応じて心理的ケア等も考慮に入れましょう。
  • ピティナに相談等をする際はcontactUSへ。

一般社団法人全日本ピアノ指導者協会
発行日 2025年9月11日
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