新しいビジョン・ミッションを策定しました ~音楽がつなげる豊かな人生~
ピティナの活動は、会員向け・会員の生徒向けのものから始まり、世の中一般向けの活動の幅も時間をかけて広げてきました。
社会課題が複雑化し、「豊かさとは何か」が問われる今、ピアノ・音楽教育は世の中にどんな価値を提供できるだろうか。長く活動を続け、多角的に事業を展開できるようになったからこそ、この問いかけに皆で向き合う時がきている。
そんな実感のもと、ピティナの幅広い活動に共感し、参加・応援してくれる人の輪をさらに拡げるため、このたび改めて「ビジョン・ミッション」を策定しました。
これまで取り組んできたことの本質的な価値を改めて言語化するとともに、どのような未来を目指していくのかを皆様と共有するために必要なプロセスととらえ、ここに経緯をご報告いたします。
「社会」という言葉を用いたビジョンを掲げる団体は数多くありますが、ピティナでは
「一人ひとりの人生」
に焦点を当てました。
生徒一人ひとりの成長と日々向き合っている職業を支えていること、そして音楽はそもそも社会的なインパクトの前に個人の
内省的なインパクト
が大きいものであるという考えを表しています。
「社会」は「一人ひとり」の集合体であって、「一人ひとり」が豊かにならなければ、「社会」の豊かさも生まれません。
そしてその「豊かさ」は、
人と人がつながること
で生まれていきます。
音楽がこの「つながり」を生む媒体として非常に優れていることは、ピティナのネットワークが17,000人の会員・650の活動拠点という規模まで発展してきた半世紀以上の歴史に見ることができます。
しかし、この豊かさがまだ届けられていない人もたくさんいます。音楽を通じた「つながり」をさらに多くの人に届け、一人ひとりの豊かな人生、ひいては社会の豊かさの実現を目指して、活動を拡充していきます。
創立当初から引き継がれる「教える人こそ学び続ける」という志のもと、指導者自身の成長を支える事業を推進・開発します。指導者一人ひとりの学びを促進する事業のうえに、地域ごとの指導者の学び合い、生徒と先生の学び合い、地域間での学び合いなど、様々な関係性の中でのつながりが広がる仕組みを構築し、全国に広げていきます。
ピアノ学習者一人ひとりのピアノに向き合うモチベーションは多様であり、ピアニストを目指し本格的に学ぶ人もいれば、純粋に楽しみとして弾く人もいます。それぞれの能力・個性・興味に応じたピアノとの向き合い方をサポートする事業を、多角的に展開していきます。そして、それぞれが音楽を通じて磨いた素養をもって、音楽に限らず多様な分野で自らの人生を豊かに切り拓いていく人を育てます。
全国の音楽人材が、民間教育・文化芸術の担い手として地域コミュニティに貢献していけるよう、行政・学校・企業等の地域の組織との連携や、地域に入りやすいコンテンツ開発を推進していきます。複雑化する社会課題や孤独・孤立の様相を鑑みると、「地域」という単位の中でのつながりがより一層求められてきます。ピアノ・音楽というコンテンツを通して、地域の人々のつながりを強化します。
社会課題の現場や異なる分野・セクターの情報を積極的に音楽教育業界に取り入れ、その時代に求められるピアノ・音楽教育のコンテンツ開発やシステム構築をリードします。個人事業主の多いピアノ指導者個人、あるいは「ピアノ」「音楽教育」という分野だけで豊かな社会を目指すのではなく、他分野・他セクターとの連携をはかり、ピアノ・音楽教育の果たす役割をアップデートしていきます。
▲上図は、既存の事業のポジショニングと事業規模を整理したマップです。新しく定めた4つのミッションに沿って、既存事業のさらなる発展と公益(右側)の事業の新規開拓を推進してまいります。
2022年10月から半年かけて作成したビジョン・ミッションは、まず本部事務局(約40名の職員)でワークショップ、ディスカッションを行うところからスタートしました。事業の現況のみならず、5年単位での発展イメージを言語化、ビジュアル化するプロセスは大変大きな収穫でした。1月には理事会、支部・ステーションとの「未来会議」を行い、共有とディスカッションを行いました。特に3回に分けて行った未来会議では113名の会員、関係者が参加し、現場のプレイヤーとして、違和感も含め、多角的・建設的に意見をいただく貴重な機会となりました。原案は、「本部事務局」が会員に寄り添って何かを行う、というようなニュアンスで組み立てられていたところ、ピティナという団体は会員一人ひとりの希望や行動が積みあがってできているのであって、「会員一人ひとり」が主体と感じられる表現に改めなければならない、などと、多くの気づきをいただきました。さらに議論に議論を重ね、3月に最終案が確定しました。
以上の通りに、活動が多様に広がり続けるピティナの関係者の心をひとつにまとめるフレーズが定まりました。関係者の想いを一つにまとめるのは難しいことですが、それでも半年にわたるディスカッションのプロセスに一番の価値がある、と合意できたのもひとつの大きな収穫でした。
ビジョン・ミッションと同時に中期計画も作成したことで、関係者が互いに見える形で目標、計画の共有がしやすくなり、コミュニケーションを着実に豊かにします。
一方で、変化の激しい時代には、「目の前の事象に対してまずアクションを起こしてみる」という、ある種計画性のない動きによって創造的な事業開発・組織開発につながることもあります。ピティナは、常に両方のスタンスを併せ持ちながら、会員・支部・ステーション等の関係者との対話のもと、まず計画に基づきながら活動の進捗や妥当性を確認しあい、しかし必要ならば計画を積極的に修正することもいとわず、事業を推進してまいります。皆様からのご支援をよろしくお願い致します。
「第10回エクセレントNPO大賞」にて全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)が大賞および組織力賞を受賞いたしました!
「エクセレントNPO」は、非営利団体の事業・組織運営を「市民性」「社会変革性」「組織力」の3つの観点から評価し、団体運営の課題をフィードバックするとともに、優れた事業・組織運営をしている団体を表彰する取組です。今回、ピティナは会員組織のネットワークを活かした事業運営を高く評価していただき、応募総数85団体の中から昨年度に引き続いての「組織力賞」、そして第10回「エクセレントNPO大賞」を受賞しました。