開催レポート~日中のピアノ指導者による交流会~
6月13日(木)、ヤマハミュージックジャパン(鍵盤事業戦略部)と共同企画となる日中のピアノ指導者交流会を東音ホール(ピティナ本部事務局内)にて開催いたしました。
ピティナでこのように国を越えた指導者交流イベントは初めての試みでしたが、中国側からは18名、日本側からは15名のピアノ指導者にご参加いただきました。集まったのは両国ともおおむね、自宅で個人としてピアノを教えている方々です。
16時過ぎから始まった会のオープニングは日本からの「歓迎演奏」。濵田眞子先生によるショパン「ワルツ Op.34-1」平井 康三郎「幻想曲『さくらさくら』」の2曲です。続いて、ピティナ専務理事の福田成康より、ピティナの事業開発の歴史、実績、今後の取り組みについて説明。
日本と中国のそれぞれのレッスンの様子の相互プレゼンへと続きます。日本からは、丸山京子先生(指導者育成委員会/所沢ブリランテステーション代表)、鳥羽瀬宗一郎先生(指導者育成委員会/さやま・茶の風ステーション代表)が登場。中国では、グランドピアノを2台並べるレッスンは珍しいこともあり、来場した中国の先生方はピティナ・ピアノコンペティション予選直前のレッスンのビデオに熱心に見入っていました。
次に、中国では50カ所以上でピアノ指導者向けの研修を行っている冷雁(レイ・ヤン)先生による指導法のプレゼンです。マンツーマンで指のトレーニング中心と言われる伝統的な中国のレッスンに対し、学習者とりわけ保護者のニーズの変化に応じるため、導入期における楽しいグループレッスンの普及に努めています。歌はもちろんダンスやボディパーカッション、即興の要素もふんだんに取り入れ、子どもたちが「遊んでいるが、実は学んでいる」という体験重視のプログラムがビデオでわかりやすく解説されました。
後半は、日本人モデル生徒のレッスンをマスタークラス形式で見学しました。日本からは笹山美由紀先生(コンペ課題曲選定委員/横浜アンサンブルアソシエステーション代表)が、スピンドラーとベートーヴェンの連弾曲をレッスン。アンサンブルの一歩目である連弾の学習によって、合図や呼吸の合わせ方、リーダーシップや協調性、音楽を受け渡したり重ねたりする楽しさを感じるなど、何重もの効果、インパクトがあることが中国の先生方にも伝わったようです。
中国側の講師は深圳芸術学院のピアノ科主任教授、陳蘭(チン・ラン)先生。レッスン曲はベルコヴィッチ『パガニーニの主題による変奏曲』です。笹山先生のレッスンは、受講者の子どもたちに「質問攻め」で、どんな演奏をするか徹底的に考えさせる進め方が印象的でしたが、陳先生もまた、変奏曲の構成、楽語の意味等を受講者が自分の中でしっかり考えるための質問を丁寧に積み重ねていきました。モデルレッスン生は9歳でしたが、レパートリーの深い解釈とスキルトレーニングに重点を置いた専門的なデモンストレーションでした。
最後は、中国からの演奏で、武漢音楽学院副教授の沈孟生(シェン・メンシェン)先生です。深い祈りのようなショパン『ノクターン Op.48-1』と、1930年代の台湾の曲『望春風』のピアノアレンジという、音楽による日中交流の場にふさわしい選曲と演奏に場内は賛同と共感のため息に包まれました。
2時間半にわたり、ピアノ教育の発展傾向、指導法及び新技術の応用などのテーマについて熱のこもった発表となりました。この交流を通じて、両国が互いのピアノ教育モデルへの理解を深めただけでなく、音楽教育分野における将来の協力関係につなげることができれば幸いです。