「わたしとピティナ」ep10:醍醐サウンドワークステーション

2005年、「京都にステーションを作りましょう」と声が上がったとき、私は思いました。
――せっかくなら、“音楽の本質に触れられる自分にしかできないステーション”を作りたい。
そして心に浮かんだのが、私自身の音楽を根底から変えてくれた「室内楽」でした。この喜びと学びを、ピアノを学ぶすべての人に届けたい――それが醍醐サウンドワークステーションの始まりです。
若い頃、弦楽器の先生方と演奏する機会に恵まれ、音楽は一変しました。一人で何時間も練習し、技術を積み上げてきたはずなのに、アンサンブルの中で初めて「音楽が呼吸している」と感じたのです。メトロノームでは測れない自然な揺らぎ、音と音が溶け合う瞬間、仲間と音楽を創る喜び――それは、それまで孤独に向き合ってきた時間が報われたような体験でした。だからこそ、柔らかな感性を持つ子どもたちに、耳から音楽を育ててほしい。 そして、音楽は一人で完成するものではなく、人とつながる中で深まるものだと伝えたい。その一心で、室内楽体験の実現に踏み出しました。
開設当初は、想いだけを頼りに、ヴァイオリン・チェロの先生方へ何度もお願いに伺いました。十分な予算もない中、志に共感してくださり、支えてくださった先生方の存在がなければ、この歩みは始まりませんでした。

第1回から第3回は弦楽器との室内楽体験、そして2008年からはコンチェルト体験へと発展しました。それに伴い、フルートやファゴットなどの管楽器とのアンサンブル、さらにヴィオラを加えたピアノカルテット編成での室内楽にも取り組むなど、より多彩な音色と響きの中で音楽的対話を深める機会へと広がってまいりました。
これまでに延べ400組以上がアンサンブル・コンチェルトを体験し、回を重ねるごとに参加者も増え、取り組みは地域に根づいていきました。参加者は幼児からシニア世代まで、また音楽愛好家から音楽大学を目指す方まで幅広く、多様な立場の方々が学びを深めてきました。
当初は小編成のため指揮者なしで実施していたコンチェルトも、より充実した音楽体験を目指し2013年度より指揮者を迎え、さらにティンパニを加えるなど編成を発展させてきました。小編成オーケストラの特性に合わせたオーケストレーションを編曲してくださった白井淳子先生の多大なるご尽力なくしては実現し得ない企画でした。

コロナ禍で一度途切れた流れも、現在は隔年で弦楽器との室内楽体験として継続しています。2026年度に再び室内楽企画を予定しており、これからも歩みを止めることなく、次世代へと音楽の喜びをつないでまいります。
アンサンブルは、最初はただ合わせるだけで精一杯。けれど回を重ねるごとに、相手の音を聴き、音色を合わせ、呼吸を感じ、音楽を立体的に表現できるようになっていくきます。毎年この経験を楽しみに参加してくださる方々の成長を見守ることは、私にとって何よりの喜びでした。そしてその経験は、必ずソロ演奏に生き、音楽そのものを深めてくれます。
また私は、指導者こそ生涯学び続ける存在であるべきだと考えています。その想いから、指導者のための室内楽体験会やセミナーも続けてきました。学び続ける姿勢は、言葉以上に、生徒へ音楽の本質を伝えると信じているからです。

現在、ステーションではピアノステップに加え、「Winter Concert」を開催して今年で20回を迎えました。響きの良いホールで演奏する経験が、人をどれほど成長させるかを、私は何度も目の当たりにしてきました。
音楽は、人を育て、つなぎ、支え、前へ進ませる力を持っています。ソロも、アンサンブルも――ピアノの無限の可能性を感じられる場を、これからも作り続けたい。音楽の本質を学び続け、その喜びを次の世代に繋いでいくこと。
それが、私の変わらぬ願いです。
| 2005年 | ピティナ醍醐サウンドワークステーション設立 |
|---|---|
| 2006年 | 5月28日:初回ステップ醍醐地区を開催、室内楽企画を実施(参加者45名/京都市醍醐交流会館) |
| 2007年 | 11月5日:ステーション主催で初めてのセミナーを実施(西谷玲子先生「きれいに弾きましょう、エチュード~四つの時代のスタイルを考えて~」) |
| 2008年 | 3月19日、20日:室内楽に加えコンチェルト企画をステップにて初めて実施 |
| 2008年 | 10月6日:指導者のための室内楽セミナーを実施(西谷玲子先生「アンサンブルってこんなに楽しい!~指導者のための室内楽体験~」) |
| 2026年 | 2026年までにステップを20回開催(現在は隔年で室内楽体験を実施、延べ400組以上が体験) |
ピティナ醍醐サウンドワークステーション(Facebook)
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