「わたしとピティナ」ep22:林苑子先生

特別企画
「わたしとピティナ」エピソード
Episode:22
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人を見るアドバイザーを育て、文章表現を考える
林苑子先生(東京都)

大学時代、演奏活動や自身の勉強の傍ら、知り合いの先生のレッスンをお手伝いする形で子どもたちに教え始めましたが、27歳の時に母が病に倒れてからは公のお仕事は全てお断わりせざるを得ず、永らく介護中心の生活をすることになりました。その間、自宅でピアノを弾いたり教えたりしながら、たくさんの書物を読んだり演奏会へ出かけたりして、奏法を研究し磨くことに努めました。

1988年、50歳で23年間の母の介護を終え、それまでお断りしてきたコンペティションの審査員のお誘いをようやくお引き受けしました。指導者として、審査員として、参加者の演奏から多くの先生がたのご指導を学びました。作曲者の意図に自分のセンスを重ねて、美しい音やテクニックを備えた演奏の出来映えを競い合うコンペティションは、指導のレベルアップに大きく貢献してきたと思います。

音楽は弾いて聴いていただくことで、初めて完成します。1997年、人前で弾くステージが、演奏の完成と勉強のヒントにつながるという考えから、より多くのステージを提供するためにピアノステップが誕生しました。発案者の戸沢睦子先生からのご依頼で、ステップ創設当時から運営委員会副委員長を務めることになり、共にステップの発展を考えてきました。演奏の機会を増やしてアドバイスを参考にして、ピアノを弾く喜びを拡げたいという想いを全国を廻って伝えるとともに、ステップは出演者が主役で、これまでの勉強と未来を考える新しい試みであり、決してコンペの下に位置するのではないこともアピールしてきました。

戸沢睦子先生、福田成康専務理事と

ステップでは実に様々な背景を持つ人へ、温かいステージと参加者に寄り添うアドバイスを提供しています。音大生顔負けの演奏をする一般大、一般就職へ進んだ生徒にとっても、力を発揮できる場となっています。コンペは曲が主役で、それを参加者がどう弾くかを見るとすれば、ステップはまず参加者がいて、その人がどういう勉強をしてきて、これからどう伸びていくのかを見る、という違いがあります。アドバイザーはそのために、音楽を言葉にするという難題と向き合うことになります。音楽は言語よりも雄弁ですが、アドバイザーは参加者へ伝えるためにその音楽を言語化し、ステップのメッセージとして文章化しなければなりません。そのためには、文章力、音楽力(ピアノ音楽への理解)、ステップへの理解、という3つの能力が兼ね備わっていなければなりません。そこで2004年アドバイザー派遣委員会を立ち上げ、アドバイザー研修会を開きこの力を育てるようになりました。練習と場数を踏むことで先生がたが良いアドバイスを書けるようになり、コンペ審査員にもこの効果が伝わっていると思います。

2005年巣鴨ステーションの記念ステップ。戸沢睦子先生(前列左)、早くから開催された上総治子先生(前列左から2人目)と

私はこれまでにコンペティションの審査は89回務め、本選委員長、全国大会審査員長も経験しました。アドバイザーを務めた回数は203回。各地でステップ説明会を開き、全国各地のピアノを聴き、年間約1500名に講評やメッセージを書いてきました。セミナー講師は110回務めたようです。全国的に演奏レベルが上がってきたことを、喜んでいます。

2009年盛岡のトークコンサート のアンコールで、初顔合わせの初見で連弾する菊池祐介先生との必死な表情!演奏はなかなか良かったと思います
2006年・石垣ステップで最南端の波照島へ

2008年目白カンタービレステーションを立ち上げ、雑司ヶ谷音楽堂で目白バロックステップを開催し、本年で26回目を迎えます。必ず1曲はバロックを弾くステップは、短い曲の多いバロックと、古典派ロマン派近現代との対比が面白く、参加者が集まりました。現在はベヒシュタインサロンに移り、クラビコードと現代ピアノを並べて、鍵盤楽器の歴史を感じる珍しい機会として日比谷バロックステップを続けています。

個人的には2022年文部科学省による社会教育功労賞をいただき、2023年ベヒシュタインホールで最後のセミナーコンサートを指導者の先生方に聴いていただいた後、ピティナの理事を辞任しました。目白カンタービレステーションの代表は神三奈先生にお任せして、毎日ピアノを弾いています。

人生を重ねても、曲の中に新しい発見があるのが嬉しいですね。

退任時、ステップ運営委員会の先生方と事務局の方々と

藝大ピアノ科や自分のリサイタルで上ばかり目指していた私が、ピティナの活動で全国を廻り、改めて日本のピアノの定着を考える社会的な視野を持てたのは、大きかったと思います。

音楽に正解はありません。「上手い、下手」と二元論で括られるものでもありません。皆様はそれぞれご自分だけの音楽をお持ちです。それを育てピアノを弾き続け、音楽を鏡にして、人生の喜びと味わいを深めてまいりましょう。

「ピアノ指導のいろは 12.ピアノ指導者の役割とは/林苑子先生」記事へ
50周年企画「対談インタビュー」 第2回 林苑子×本多昌子
  • ピティナ指導者

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皆様の記憶に残るピティナとの思い出や、大切に保管している写真・グッズを募集しています。会員、参加者、保護者の皆様、どなたでもご参加いただけます。

募集テーマ
寄稿「わたしとピティナ」

あなたとピティナの歩みを文章で教えてください。(長文・メール送信も可) 人生の節目にあったピアノ、指導の現場での気づきなど、形式にとらわれず自由にお書きください。

例)
  • 初めてのピティナ参加の思い出
  • ピティナでの思い出エピソード
  • 私のピティナ史(ピティナとのかかわりの変化)
  • ピティナで培った〇〇が今に生きています
  • ピティナで見つけた宝物(生きがい/仲間/恩師/アイデンティティ…)
  • 支部、ステーションの設立から今までの道のり
こんなもの見つけました

思い出のアルバムや引き出しの中に、懐かしいものはありませんか? 当時の様子がわかる写真やグッズを、短いコメント(200文字程度)を添えてお送りください。

例)
  • 思い出・懐かし写真(ステーション設立時、表彰式、公開レッスン、〇〇と記念写真…)
  • 思い出・懐かしグッズ(昔の記念品、パンフレット、採点票…)
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皆様のご応募を、心よりお待ちしております。


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