特別企画「わたしとピティナ」ep1:沢村郁さん(ピティナ参加者)

ピアノを演奏して、こんなにも大泣きすることがあるのだ、しかも50過ぎのいい歳をして──。こんな意外な、ある意味ショックな体験をしたのが、2013年秋に開催されたピティナ沖縄支部主催・シニアピアノコンサートの初舞台だった(沖縄支部主催のシニアピアノコンサートはコロナ禍をはさんで毎年開催)。52歳の時、まったくの初心者ながらクラシックピアノを習い始めた。シニアピアノコンサートは先生に出演を勧められた、最初の大きなステージでの演奏だった。演目はジブリ映画に使われた、「さよならの夏」。人生初めてのピアノ、人生初めてのステージ演奏、しかもスタインウェイフルコンでの演奏。客席には家族や友人たちの顔。
どんなことにせよ、「生まれて初めてやること」は、緊張と不安がつきものだが、この時の緊張は、人生で体験したことのない異様なものだった。ステージで卒倒するのではないかと思った。指は震えるし、どこを弾いているか分からなくなるし、どう弾き始めたかも感覚がない。譜面は見ているが、視線は泳ぎ、音符なんて追えない。なんとか先へ先へ弾き続け、とにかく最後の和音を鳴らした。時間にして3分少々だが、とてつもなく長く感じた。譜面を閉じてステージ前方に出てお辞儀をし、舞台袖に向かって歩き出した時…。突然、大粒の涙がわきあがり、嗚咽が止まらず、「オエッ、オエッ」と、歩きながら大泣きしてしまったのだ。人間、極度の緊張から解放されると涙が止まらないらしい、ということを初めて体験した。

「初ステージで嗚咽して大泣き」の体験を、ピアノ人生の最初に体験したからか、それ以降、ステップやコンクールなど大きなステージで、指が震える、ということはない。しかし緊張は相変わらず。初ステップの時には、暗譜で弾こうと意気込むも、ピアノの前に座した途端、アタマ真っ白。「最初の1音」が飛んでしまい、どの鍵盤を弾くのか、思い出せない。うんうん唸って、やっと思い出した!と、弾き始めたはいいが、また途中で真っ白になる。「えーと、えーと」とやっていると、時は過ぎる。制限時間ギリギリでなんとか弾き終えた。よく途中棄権しなかったものだ。歳の分だけ肝が座わっているらしい。
近年はピティナ提携のコンクールにも挑戦しているが、予選でも失敗ばかり。こんなに毎日練習しているのに! 納得のいく演奏ができたためしがなく、私の本番演奏は「失敗の歴史」を更新しているようなものだ。しかしどんなに失敗しても、いい演奏ができなくても、「もうやーめた」と、ならないのが私のいいところ。
その根性と根気強さのお陰で、「嗚咽と大泣き」の初シニアピアノコンサートから8年後の2020年、我が還暦の誕生日には、「還暦記念ピアノリサイタル」を実現した。この日のためにベートーヴェンピアノソナタに初挑戦し、第8番「悲愴」の第1楽章でプログラムを締めた。新型コロナ禍に突入していたが、感染対策をおこない、敢行した。東京からも来場してくれた家族、友人、知人たちが「ピアノなんてまったく弾けなかった人が、ベートーヴェンを弾いている!」と驚き、賞賛を寄せてくれた。(「悲愴」はその後、新型コロナ禍でもオンラインレッスンを受け、第2、第3楽章も習得、全楽章をコンプリート。コロナ禍が続いていたが2021年春に規模を縮小して誕生日コンサートを開催し、全楽章演奏を果たした)
人生、山あり谷あり。喜びあり、悲しみ、嘆きあり。気づけば、どんな時も、いつも傍らにいて、支えてくれているのがピアノです。最良の伴走者を得て、めざすは古希記念ピアノリサイタル!あと5年。どんな曲に巡りあえるか、どんなプログラムにしようか、今からワクワクです。クラシックピアノ大好き・前期高齢者おばあさんのお話でした。
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