「わたしとピティナ」ep15:かつらぎステーション 岡田一美先生

特別企画
「わたしとピティナ」エピソード
Episode:15
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人と人を結ぶ芸術への案内人
かつらぎステーション 代表:岡田一美先生(奈良県/2003年)

当かつらぎステーションは2003年に発足し、今年で24年目となります。自宅サロン「シェモザー」を本拠地にステーションスタッフが集まり活動しています。

2002年12月、今では毎年恒例となっているプロもアマチュアも関係なく音楽を愛する人なら誰でも参加できる交流コンサート「大人のためのクリスマスコンサート」を開いてレポートを書いたのがきっかけで、本部事務局の實方さんからステーション設立のお声かけをして頂いたのが始まりでした。

プロもアマチュアも関係なく、音楽愛好家が集う交流コンサート「大人のためのクリスマスコンサート」(2020)
コロナ禍では恒例のパーティーも箱入りの個食で

当初は、「シェモザー」で完全入替え制で行い、アドバイザーの先生方の控室や集計室は、我が家の和室を利用し、アットホームなステップからスタート。3年目からは、一般ホールに場所を移し、毎年秋にステップを開催することになり、来年でかつらぎステーションも25周年を迎えることになります。

2003年初開催ステップ
2003年初開催ステップ

スタッフメンバーは、地域の指導者の先生や私の同門の友人で支えられて来ました。最近では、門下の若手指導者も加わり、益々パワーアップしております。

10周年記念ステップにて
ドゥオールをゲストに室内楽とサンサーンスの「動物の謝肉祭」を共演

これまでステップ以外に行ってきた様々な活動を紹介します!

1,2003年~ 「大人のためのクリスマスコンサート」以外にも国際的ソリストを目指す若手音楽家を支援するリサイタルシリーズ「チャレンジコンサート」の開催。当初、桐朋の学生だった娘が、サンクトペテルブルグで行われるプロコフィエフ国際コンクールの練習舞台として行ったコンサートが始まりで、国際コンクールや留学前の試験、リサイタルなどの大きな舞台の直前に若手を応援するコンサートとして現在も続いています。これまで20回開催し、歴代のチャレンジャーには、ピティナで有名な酒井有彩さん、日コン優勝者の喜多宏丞さん、TVで大活躍の清塚信也さんなども。

2, 2006年~ 当時、桐朋学園大学の特任教授をされていた世界的ピアニスト田崎悦子先生をシェモザーに招き、毎年夏、5日間の合宿型公開ピアノセミナー「Joy of Music」をコロナ前まで15年間に渡り開催を続けてきました。全国から集まった受講生が先生と同じ一つ屋根の下で寝食を共にし、作曲家の遺した作品に真摯に向き合い、公開レッスンやコンサートを通して生きた音楽を聴衆にシェアしたり、お寺見学などをしたりと、仲間と共に考え、音楽の本質を学んできました。5周年や10周年の記念コンサートでは、室内楽とコンチェルト共演なども行いました。

合宿型公開ピアノセミナー「Joy of Music」
田崎悦子先生によるレッスン
5日間寝食を共にする
お寺見学

3, 2008年~ ステーションスタッフで作曲家の安藤久美先生による創作オペラ「歌ものがたり中将姫」の上演。葛城市の古刹、當麻寺に伝わる中将姫の伝説を地域のオペラ歌手や合唱団など市民が参加できる葛城市の市制記念音楽祭のために創作されました。その後、2010年奈良遷都1300年祭では、奈良県の支援事業として奈良100年会館との共催で、ステーションが立ち上げた「かつらぎチェンバーオーケストラ」をバックに本格的なオペラ上演を開催。その間、當麻寺や一般ホールなど様々な場所で公演を重ね、初演からちょうど10年後の2019年3月には、初演から10周年となる年に日伊国際交流団体の協力で念願叶い、ミラノ公演が実現し、私は総監督を務めました。さて、次の公演は、いつ、どんな形になるでしょうか? 

「中将姫」ミラノ公演(2019)
「中将姫」ミラノ公演(2019)

4, 2009年~ ピティナ学校クラスコンサートを開催。葛城市立磐城小学校にドゥオールを迎え、関西初の実施となり、2017年までに4校の実施、その後しばらく活動休止。2025年11月 ステップ前日に合わせ、葛城市立忍海小学校での実施。しばらく休止していたクラスコンサートですが、若手スタッフのお陰で意欲的に活動することになりました。2026年度より葛城市教育委員会との協力で、「小学校4年生になれば必ず聴ける」ロングランの体制づくりをし、学校が希望すれば、毎年葛城市の全小学校で実施が可能となる見込みです!葛城市の文化として根付くことを願っています。

奈良学園小学校(ルイ・レーリンク先生/2011)
葛城市立當麻小学校(奈良井巳城先生/2017)

5, 2009年5月 かつらぎチェンバーオーケストラを立ち上げ、創立記念コンサート。共演者を募り、コンチェルトの共演や指揮者体験コーナーも。将来は指揮者になりたい!という当時4歳の坊やは、夢を叶え、京都市立芸術大学指揮科を卒業し、今年春から仙台フィルの副指揮者に決まりました!

かつらぎチェンバーオーケストラ創立記念コンサート
子ども指揮者体験

6, 2021年春~ コロナ禍真っ只中、活動を制限された音楽家を支援するために誕生したコンサートシリーズで、「サロン・ド・テ・シェモザー」と題し、ディスタンスを保つため、ティールームのようにテーブルを置き、定員は、半数に減らし、2公演。不要不急の外出が禁じられたコロナ禍、「久しぶりに会った友人と静かに音楽を聴き、そっと顔を見合わせ、静かにティータイムを楽しみましょう!」と季節やテーマに合わせた作曲家の食卓を楽しみました。もちろん、マスク、消毒、アクリル板の設置など、細心の注意を払いながら。(これまで22回開催し、2022年5月 Open Piano Project に登録し、ピティナ本部より1日中取材をして頂きました!)誰もがしみじみと音楽の持つ力を実感した企画です。

サロン・ド・テ「シューベルティアーデ」
コロナ禍では恒例のパーティーも個食で
シェモザーの取組に惹かれて集まるボランティアスタッフたちと

7, 2026年春~ 新シリーズ「世紀の巨匠を聴く」スタート(年に4回開催予定)。シェモザー25周年を迎え、出演者のいない斬新な企画を提案。今は亡き世界の巨匠たちが遺した名演奏レコードを真面目に聴く会。You Tubeなどで溢れている音楽をイヤホンを着ければいつでもどこでもプライベートな環境で録音を聴くことができる現在ですが、特に未熟な学習者には、演奏者にもあまり関心なく聴いたり観たり、それが本物かどうかも見極めることが出来ず真似てしまっていることも少なくありません。現代社会は便利ではあるけれど、使い方を間違えてしまうととんでもない方向に行ってしまう危機感を覚えてしまいます。特にクラシック音楽は、これまで脈々と受け継がれてきた伝統が継承され、作り上げてきた芸術だと思います。作曲家や歴代の演奏者のエピソードなど当時に想いを馳せ、真の芸術を次の世代へと継承することができれば幸いです。

8, 2024年11月、ヴァイオリニスト、テディ・パパヴラミと書家、宮下寛昇氏のコラボレーションを通し、二人の芸術家の物語を描いたドキュメンタリー映画プロジェクト「筆と弓」の撮影が葛城市を舞台に行われました。フランス人監督率いるスタッフをシェモザーに泊め、ステーションは、その公開リハーサルを葛城市主催の文化祭で主催しました。写真は、その1年後、2日間に渡りバッハ全曲リサイタルの中で行われたシャコンヌと書のコラボの様子(於:ジュネーヴ音楽院)

ドキュメンタリー映画プロジェクト「筆と弓」

これまでステーション活動を通し、大変多くのことを学ばせて頂きました。これからもステーションは、音楽という美しいものを私たち自身が楽しみ、研鑽を積む中、音楽と社会、人と人を結びつける芸術への案内人として貢献したい、と想いを新たにしております    

2026年3月28日 かつらぎステーション代表 岡田一美

以下は、3名のスタッフによる寄稿文です

ステーション設立当初からずっと一緒に活動を共にしてきた作曲家の安藤久美先生

ピアノ指導者はともすれば孤立しやすい仕事ですがPTNAを通じ多くの指導者の方から情報や刺激をいただくことができました。自分の成長につながったことはもちろん、生徒たちにより良い音楽を伝える助けになったことに深く感謝しています。

かつらぎステーションでの25年間で私が最も心に残っている事といえば、何といっても2008年「歌ものがたり・中将姫」をゼロから作り上げ、十年後にはコンサート形式のオペラとしてミラノでの公演を実現できたことです。私はそれに脚本と作曲という立場で参加させていただきました。中将姫というのは葛城市の古刹当麻寺に1300年前から伝わる広く知られた伝説なのですが、この地元の宝ともいえる物語を音楽を通して世界に発信しよう、とかつらぎステーションが中心となりピアノ指導者だけではなく地域の音楽家、合唱団、行政など多くの方々の思いを集結し成しえたプロジェクトでした。

PTNAといえばコンクール入賞をめざすピアニストを育てるところ、というようなイメージが未だにあるかもしれませんが、長く関わらせていただきむしろその対極、ピアノの楽しさ、音楽の豊かさを伝えるところだとよくわかりました。しかもそれをレッスン室にとどまらず地域の学校や文化団体など社会に広く伝えていこうという志がすばらしいと思います。 (安藤久美)

私の娘でジュネーヴ在住の岡田真季(正会員)

私は、2024年秋、市の文化祭において葛城市マルベリーホールで行われた「筆と弓」コラボレーションコンサートに、運営に関わる一人として立ち会いました。

「筆と弓」は、ヴァイオリンの弓と日本の書の筆に共通する身体感覚や時間性に着目し、ヴァイオリニストのテディ・パパヴラミと、書家であり住職でもある宮下寛昇氏との対話から生まれた、国境や芸術の垣根を超えた前例のない試みのドキュメンタリー映画企画です。この日は一般のオーディエンスを前に、バッハのシャコンヌの演奏と書の揮毫が同時に行われ、「音を見る」「書を聴く」という、通常の鑑賞の枠を超えた時間が立ち現れる場となりました。

このような公演が実現した背景には、ピティナおよびステーションが長年にわたり築いてきた、地域と芸術をつなぐ場の存在があります。同じく音楽も書も、年月の積み重ねによって深められる表現である一方、作品が立ち現れるのは常に一回性をもつ場です。その一瞬一瞬に集った人々と芸術のあいだに生まれる感動や尊敬に基づくコミュニケーションが、時間の流れをつなぎ、次の未来へと橋渡しをしていくのだと感じました。

この経験は、演奏者、企画者、また聴衆ともなる自分自身への芸術への立ち会いかたを、今後どのように次の場・世代へと繋いでいけるのかを考える契機となっています(岡田真季)

設立当初より毎年、指導者としてステップに参加、昨年度より若手スタッフとして活動して頂いている斎藤知子先生

学校クラスコンサート20周年を迎える2025年に、ステーションスタッフとして学校へ伺いました。普段クラシック音楽を殆ど聞かないであろう子供達が、間近でのプロの演奏に、耳を澄まし、心で感じ、自然と身体が揺れている様に、大変感動しました。時には、ある児童から掛け声が発せられ、それがクラスの皆へと広がり、皆んなで作り上げた音楽という一体感を感じました。

このような素晴らしい体験を一度限りではなく、遠足や運動会などの学校の恒例行事の一つとして、根付いていって欲しいなと思います。そして、いつの日か親子でクラシックを気楽に聴きに行く、そんな日が来れば良いなと思います。

ステーションでの活動は、私にとって貴重な経験です。はじめの一歩を踏み出す事、実現できるよう道筋を建てること。沢山の活動を通してステーションと共に成長していきたいです。 (斎藤知子)

ピティナかつらぎステーション(ピティナ・コミュニティ)

ピティナかつらぎステーションの歩み(2003年~2026年)
2003年 9月9日:ピティナかつらぎステーション設立
2003年 若手音楽家を支援するリサイタルシリーズ「チャレンジコンサート」初開催(これまでに20回開催)
2003年 11月23日:ピティナ・ピアノステップ初開催(北葛城地区/Conservatory 「chez Mozart」 シェ・モザー)
2006年 8月2~6日:合宿型公開ピアノセミナー「Joy of Music」を初開催
2007年 11月11日:橿原ステップを初開催(北葛城地区:奈良県橿原文化会館 小ホール)
2008年 3月20日:創作オペラ「歌ものがたり中将姫」初演(マルベリーホール)
2009年 5月6日:かつらぎチェンバーオーケストラ創立記念コンサート
2009年 10月19日:学校クラスコンサート初開催(葛城市立磐城小学校/ドゥオール)
2012年 11月3日:かつらぎステーション ステップ10周年記念コンサート お話で綴る 2台のピアノデュオ&室内楽 「動物の謝肉祭」を開催
2021年 コンサートシリーズ「サロン・ド・テ・シェモザー」初開催(これまで22回開催。2022年よりOpen Piano Project登録)
2026年 「世紀の巨匠を聴く」シリーズスタート
2026年 2026年までにステップを21回開催
  • ピティナステーション

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皆様の記憶に残るピティナとの思い出や、大切に保管している写真・グッズを募集しています。会員、参加者、保護者の皆様、どなたでもご参加いただけます。

募集テーマ
寄稿「わたしとピティナ」

あなたとピティナの歩みを文章で教えてください。(長文・メール送信も可) 人生の節目にあったピアノ、指導の現場での気づきなど、形式にとらわれず自由にお書きください。

例)
  • 初めてのピティナ参加の思い出
  • ピティナでの思い出エピソード
  • 私のピティナ史(ピティナとのかかわりの変化)
  • ピティナで培った〇〇が今に生きています
  • ピティナで見つけた宝物(生きがい/仲間/恩師/アイデンティティ…)
  • 支部、ステーションの設立から今までの道のり
こんなもの見つけました

思い出のアルバムや引き出しの中に、懐かしいものはありませんか? 当時の様子がわかる写真やグッズを、短いコメント(200文字程度)を添えてお送りください。

例)
  • 思い出・懐かし写真(ステーション設立時、表彰式、公開レッスン、〇〇と記念写真…)
  • 思い出・懐かしグッズ(昔の記念品、パンフレット、採点票…)
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  • メールでの送付をご希望の方はform@piano.or.jpまで

皆様のご応募を、心よりお待ちしております。


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